【リプレイもどき】あまりのロトロ おまけ話【捏造あり〼】
前作の後日談にして酷いお話。
戦闘部分以外は、基本的に捏造です。キャラ崩壊にご注意。
#よその子 #柳火(黒パナ)
#うちの子 #ファスト
「再戦、ですか」
「そうだ」
あれから数日後。
再び謳う烏亭を訪ねたファストへと、柳火が頷いてみせる。
「アンタに負けたまんまってのは悔しいんだ。今度こそ勝ってみせる自信もある」
「えぇー……」
せっかくこうしてまた顔を合わせたのだから、とやる気満々な様子で鼻息も荒く──といっても、兜のせいもあって正確な判別はつかないのだが──詰め寄る相手ではあったが、言われる当人はと言うと険しい顔で呻いた。それはもう嫌そうな声で。
「面倒です」
「いいじゃないか別に、減るもんでは無し」
「減りますよ、体力が……大体、疲れる事は好きではありません」
「じゃあ何でこの間はOKしてくれたんだよ!?」
「そういう気分でしたので」
「ぐぬぬ……」
そうなのだ。ファストは、こう見えてマイペースに我が道を行くタイプなのである。自分が興味を持ち、したいと思った事は対価すら求めること無く進んで引き受けるくせに、したくない事はどれだけ金を積まれてもしない。そこを無理に押し続ければ、今度は完全にへそを曲げて対応すらしてくれなくなる。
さすがにその段階まで行くのはマズい、と柳火は黙り込みどうしたものかと思考を巡らせた。とりあえず、まずは相手のやる気を引き出さねばならない。それには確実に食いつくだろう餌を提案しなければならないだろう。
(こないだの情報屋は何と言っていたか……)
柳火は、次こそは打ち勝つ為に対策を練るついで、駄目元で情報屋にファストについてを調べてもらった際の話を思い出した。馴染みの盗賊ギルドに赴いた際、居合わせたその情報屋──盗賊ギルドより闘技場が似合いそうな、半裸で傷だらけの、蛮族感のある図体のデカい男だった──を名乗った男は、金貨の袋を満足気に弄びつつこう言っていた。
『その男を食い付かせたけりゃ、ネタは選ばねぇとな。例えば、そりゃあ古代遺跡についてだったり、或いは未開の地に潜む竜種の話なんかなら確実だ。……が、まぁそんなモンはそうホイホイ落ちてるネタじゃぁネェ訳だ。そういう時はコイツを使うのさ』
言って、情報屋が取り出して見せたのは瓶詰めにされた黄金色の液体である。いや、液体と言うには少々粘度が高い。
『コイツはちょいと遠方の土地で手に入る極上の高級蜂蜜さ。どこぞの王宮御用達なんて話もある一品でね。お値段は張るが、なめらかで上品な味わいは値段相応の価値がある。……奴はコイツが好物でね。ここまでの上等品があるとなりゃあ、確実とは言えねぇが……ま、八割の確率で食いついてくれる筈だぜ』
情報量に上乗せで持っていかれた料金は多少痛かったが、譲ってもらったのは言うまでもない。柳火はそれを素早く取り出した。何を唐突に見せるのかと目を丸くしているファストは、その瓶の蓋部分に貼られたラベルを見て即座にそれがどういう品なのかを察したらしい。困惑の表情で口を開く。
「……コレは……また貴方、よくもこんな珍しい蜂蜜を見つけてきたものですね。蜜の材料になる植物も特殊な上、取り扱い先も殆ど無い関係で市販には出回っていない品ですよ? こんな物を、一体何処で?」
「嗚呼、何、仕事の関係でちょっとした縁があってな。……なぁ、ファスト。タダとは言わない。再度の手合わせに短時間付き合ってくれたら、これをアンタに譲る。だから付き合っちゃくれないか?」
「交換条件ですか」
ほんの僅かに迷いを見せる様子に、柳火は畳み掛けるように続けた。
「本当に短時間で良い。一時間だけアンタの時間を貸してくれ。勝っても負けても、それで俺は満足する」
「一時間だけ……ですか。…………、………………わかりました」
ため息をついて、ファストは渋々と首肯する。
「本当に一時間だけですよ?」
「分かってる」
「ちなみに、一時間の間はずっと貴方の手合わせをすればいいという感じで?」
「そうだ。気絶したとしても回復して叩き起こしてくれたら良い」
「……物好きですねぇ」
軽く引き気味な様子でそう呻いたファストは、ふとそこで、思い出したように口を開いた。
「……そうでした。戦い方は、私の好きにやって構いませんよね?」
「ん? あぁ、勿論。当然だ。アンタはアンタで好きにやってくれていい。ただ、手加減だけはしないでくれ」
「そうですか。……了解しました。では早速行きましょうか。先日と同じ場所で良いんですよね?」
一体何故そんな事を問うたのか。
そんな疑問が一瞬頭を過ぎったが、結局確認するタイミングを逸した柳火は後にその事を後悔する事になるわけだが……勿論、この時点で彼にそんな未来を知る由もなく、そのまま先日の広場へと赴くのだった。
◆ROUND:01 ~『竜殺しの牛蒡』編~
「なぁ」
「何でしょう」
「それは……何だ?」
「牛蒡ですが」
「ゴボウ」
「野菜ですね」
「それは知ってる」
「じゃあ分かっているじゃないですか」
「いや、野菜なのはわかってるんだが!」
「じゃあ何がわからないと?」
「何でそれをアンタが武器みたいに構えて俺と対峙してるのかって所がだよ!!!」
力いっぱい柳火は叫んだ。それはもう腹の底から、心から叫んだ。
まあ、目の前に真面目な顔をして牛蒡を携えた中年紳士が居れば、誰でも叫ぶと思うが。
「どういうことだよ!? ふざけてんのか!?」
「いえ、至極真面目ですが」
「それならそれで大問題だが!? というか何で牛蒡なんだよ!? 本気で手合わせしてくれって言ったよな!?」
「一々細かい上に煩い男ですねぇ……」
心底嫌そうな顔をするファスト。あまりにもそれは理不尽ではないか、と柳火は思った。
何が悲しくて牛蒡装備の男と本気で戦わなければならないというのか。
「本気も本気ですよ。だからコレを出しました」
「どの辺りが本気なんだ!?」
「これは『竜殺しの牛蒡』です」
「りゅうごろしのごぼう」
思わず聞こえた未知の単語を復唱する柳火。
「いえ、実は先日、とある場所で大量の竜を狩る機会に巡り合いましてね。その際に手に入れた一品です。コレには『竜殺し』の概念が込められています。立派な武器と言えるでしょう」
「……酒とか飲んでないよな?」
「素面も素面ですが。失礼な方ですねぇ……」
酷く憮然とした態度で責められて、柳火は思わず自分が悪いのだろうかと思いかけた。
「ともあれ戦いますよ。時間が惜しいです。一時間しかありませんからね」
「え……えぇー……」
そう、胡乱な返事を返したのが数分前の事である。
「……。…………。………………」
「どうでしたか?」
「……こんなの詐欺だろ」
「詐欺とは失礼な。だから言ったじゃないですか、竜殺しの牛蒡だと」
地面に大の字に転がる柳火は、兜の奥から遠い目で空を見上げていた。
全身が痛い。
「牛蒡に……何で牛蒡に……俺が負けるんだ?」
「まあ立派な武器でしたからね」
結果は惨敗だった。
こればかりは負けを認めないわけにもいくまい。
だって柳火は、牛蒡にベシベシ叩かれまくって気がつけば地面に転がっていたのだから。
見下ろしてきている紅コートの男は、マジで涼しい顔で牛蒡でぶん殴ってきた。大鎌の斬撃を牛蒡でいなし、的確に全身を牛蒡で殴打していった。多分、六十回以上ぶん殴られた気がする。途中、何度か鍔迫り合い──鍔なんて牛蒡にはないが──もした気がするが、両断される事もなく牛蒡は傷一つ付いていなかった。
わけがわからない。
「納得されましたか?」
「……納得出来るわけ無いだろ」
「頭が硬いですねぇ……」
嘆かわしい、と言わんばかりの声音で言われたがこればかりは俺は悪くない、と柳火は思った。
◆ROUND:02 ~『16Shot』編~
「次はもうちょっとマトモに頼む」
「先程もマトモなつもりだったんですが……まあ良いでしょう」
言うファストは、しかし無手のまま柳火と向かい合っていた。
武器を取り出す気配はない。
「俺は武器を使うわけだが……本当に良いのか?」
「先日それで叩きのめされておいてソレを言いますか?」
「むっ……」
それもそうか、と思い直して改めて柳火は大鎌を構えた。この男の武器の有無があまり関係無い事は、身を持って思い知ったばかりである。慢心を持っていては勝てない、と改めて反省しつつファストを見据えた。
「行くぞ!」
鋭い呼気を吐けば大鎌を手に駆け出す柳火。その刃の刈り取る領域へと獲物が入り込んだ瞬間に、素早く横薙ぎの斬撃を放つ。しかしファストはそれに対して後ろに退かなかった。斜め前方へと飛び込むような前転運動で死神の刃を回避すれば、そのままの勢いを殺さぬまま素早く立ち上がり柳火へと接敵し、殴ってくる……かと思いきや。
「は!?」
ファストが素早く繰り出したのは握り拳ではなく、人差し指だった。
兜の隙間を狙った目潰し──酷く非効率かつ狙い難そうな攻撃ではあるが無くはない──か、と判断し思わず首を横に向ける柳火。殴られる可能性は無くは無かったが、それでも兜越しなら多少は耐えられる。そう思ったからだった。
が、しかし。
ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!
感じた衝撃は一撃ではなく、十六連撃だった。細かく、しかし力強い振動はわりとえげつない勢いで兜を豪快に揺すった。視界がブレるぐらいだったのだからその威力は並ではない。勿論、中身である頭も、その内側にある脳みそも振動をモロに受けることとなる。
思わずふらついたが、それでも何とか反撃を繰り出す柳火。しかしその攻撃はファストを捉える事はない。紅コートはまたもや死角から兜を連打する。人差し指で。
「ちょ、ま」
ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!
「この、……くそ!?」
ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!
「う……っ」
当然の様に、気持ちが悪くなってきた。
軽く脳震盪のような症状が出ている気がするが、もはや柳火にはよく分からない。
何とかそれでも戦おうと奮闘すること暫し。
吐き気と目眩で柳火がぶっ倒れたのは、それから数分後の事だった。
「大丈夫ですか?」
「もう吐けねぇ」
「でしょうねぇ」
やっとスッキリしてきた頭を振りながら木陰から戻ってきた柳火へと、遠く離れた場所からそんな相槌を返してくるファスト。そちらへと視線を向けて純粋な疑問を投げた。
「……何したんだアンタ」
「十六連打です」
「じゅうろくれんだ」
「こう、人差し指でですね。叩きました」
貴方の鎧と頭を、と人差し指を立てて見せるファスト。
その表情には嘘がない。
「なんだそれ……」
「いえ、前にとある場所で『名人』と名乗る方とお会いしましてね。その方に教えていただきました。一秒間に十六連打するのがコツ、だそうです」
「何でそれを俺に……?」
「ふと思い出したので、試してみたくなったと言いますか」
朗らかに笑うファストに、柳火が胡乱な眼差しを送ったのは言うまでもない。
◆ROUND:03 ~『ミリヤラスト』編~
「そろそろ普通のを頼む」
「注文が多いですね……まぁ、あの蜂蜜の対価と思えば安いものですか」
言えば、ファストは紅コートの内側から──多分何らかの術式を使っての事だろうが──ずるりと何かを引っ張り出した。二つ折りにされた、わりと大きな物体である。それを片手で持てば手首の捻りだけで軽く振ってやるとバネが弾けたような勢いで伸び上がった。怪訝げに眺めていた柳火の視線を感じてか、ファストは小さく笑って口を開いた。
「弓です。昔から愛用する一品でして」
「弓」
それにしては、と柳火は唸った。普通の弓といえば細く長い棒をやんわりと曲げたような形をしていて、長さはあっても横幅はさしてないものが基本だ。が、これは全く違う。どういう機構なのか、巨大な化け物の顎か何かの様なパーツがついていて、ちょっとした盾ほどもある巨大なそれを弓と称して良いのか迷うところではある。
その末端から伸びる弦は三本あり、どれもがやたらと太い。子供の小指ほどもあるのではないかと思わせる頑丈なもので、三本の交点で一つにまとめてある。そこを持って多分引き絞るのだろう、というのだけは察せられた。
「何というのか……ゴツいな」
「よく言われますが……どうもこういう弓の方が自分は落ち着きますね」
言えば、適度に距離を取るファスト。
「遠距離武器という事で、多少先程よりは距離をいただきますよ?」
「構わないさ」
まあ本体がどれだけゴツくても弓は弓だ。そう割り切って柳火は再び大鎌を構える。ファストが矢を番え、弦を引き絞るのを確認したところで走り出した。相手の武器は遠距離武器だ。適度な距離がある場合ならともかく、近接に詰めてしまいさえすれば無意味となる。
「今度こそ……!」
打ち勝ってみせる、という気合も充分に走り出した柳火の耳に矢が放たれた音が聞こえた。瞬間、恐ろしく速い気配を感じ取り反射的に大鎌を振るう。確かな手応え。だが、やたらと思い。何事かと思い刃が切り裂いたものを見て、柳火はぎょっとした。それは矢ではあったが、通常のものとは明らかに形状が異なっていたからだ。
矢柄の長さは普通の矢と同じだろう。しかし太さが違う。万年筆ぐらいはあろうかというそれに、ちょっとした短剣程もある鏃がついているのだ。人に当たれば大穴が開くのではと思わずには居られない。
「竜狩り用の矢なのでお気を付けください」
「人相手に使うものじゃないだろうコレは!?」
「大丈夫ですよ、柳火さんなら。……ほら、次はもうちょっと面倒なのをやりますよー」
にこにこ、と音がしそうな笑顔でのたまうファストから嫌な気配を感じて柳火は身構えた。接近しようと前に出る足を思わず止めてしまったのは、動くのはマズいという直感があったからだ。果たして、その勘は的中する。
ファストの放った次の矢は、一体どういう原理でか放たれた直後に無数に分裂した。確かに放たれる瞬間までは一本だった筈のものが、高速で飛来する途中で数を一気に増やしていく。その数、下手すれば数十本以上。その全てが、恐ろしい速度で弧を描いて飛来したのだ。攻城戦もかくやと言わんばかりの光景である。
「無茶苦茶だろう!?」
思わず叫びながら半ばやけくそで柳火は大鎌を振り回した。重い手応えを何度も何度も切り裂いて、気がつけば周囲の地面に突き立つ無数の矢の群れの只中で、彼の立つ場所だけきれいな穴が空いている。最後に落ちてきた一本を叩き切り、今度こそ駆け出す。隙が出来たこのタイミングで、距離を詰めるしか無い。
が、しかし。
「終わりだと思うのは早計では?」
狙いを定め、衝撃を耐えるためだろう。ファストは片膝を付き、柳火へと弓を向けていた。その番えられた矢の後方に何故か火花が散っているのが見える。ヤバい、と思った時には遅かった。恐ろしい勢いですっ飛んできた矢はバリスタなどとは比べ物にならない速度で柳火を襲ったのだ。
大鎌で身を庇う事が出来たのは日頃の鍛錬の賜物だろう。大きな刃にぶち当たりつつも切り裂かれることもなく推力を失わなかった頑丈な矢は、そのまま角度を変えて空へ向けてすっ飛んだ。途中、頭を守っていた兜を掠めて吹っ飛ばしていったのだからその勢いは言わずもがなである。思わず尻もちをつく柳火。
「さすが柳火さんですね。アレに反応出来るのですから」
「竜狩り用の技を人に放つな」
「最近は攻城戦などで城落としの際などに使うので、ある意味対人向けですよ?」
「やかましいわ」
ドッと感じた疲れに心が荒むのも、半ば致し方ない話だった。
◆ROUND:04 ~『アッチャラペッサー』編~
「……そろそろ一時間か」
何だかもっと長くこの苦行に向き合っていた気がする。そんな事を思いながら柳火は大鎌を構えた。そろそろ時間切れになってしまう訳だが、現状、一度も勝てていない。ここらへんで一つ勝利を、いやせめて多少は苦戦を相手に強いてみたい。そんな切実な思いを胸に、柳火は敵を見据える。
そんな事を思われているなど知りもしないファストは、あまり疲れている様子では無かった。息も乱れていなければ怪我もしていない。さっきからボロクソにされている自分とは裏腹に余裕すら感じる。
「次の一手は何だ……?」
警戒心を隠しもせず得物を構える柳火へと、ファストが口を開いた。
「アッチャラペッサー」
「あ……?」
何を言っている?
思わず聞き返す柳火に、相手は繰り返した。
「アッチャラペッサー」
「あっちゃらぺっさー」
「アッチャラペッサー」
「いやだから、その何とかってのは」
「アッチャラペッサー」
「ファスト?」
「アッチャラペッサー」
「おい?」
「アッチャラペッサー」
狂ったか? とその正気を疑い出した辺りで柳火は気付く。
何故か動けない。
体も怠い。
しかも体力も削られている気がする。
しかも妙にその呪文──だろう多分、きっと──は耳に残った。
アッチャラペッサー。
一度聞けば意識にこびり付くような。
思わずつられて、声に出してしまう柳火。
「あっちゃら……」
「アッチャラペッサー」
「アッチャラ、ペッサー」
「アッチャラペッサー」
「アッチャラペッサー」
「アッチャラペッサー」
「アッチャラペッサー」
「アッチャラペッサー」
もう、アッチャラペッサー以外何も考えられない。
朦朧とする意識の向こうで、ただその謎めいた呪文だけが響いていた。
「大丈夫ですか?」
「……ハッ」
多少心配げな声音に、意識が引き戻される。
今なにかとても悪い夢を見ていた気がした。
「俺は、一体……」
「流石にぶっ続けで戦っていましたからね。疲れが出たのでしょう。フラフラし始めたかと思ったら、倒れてしまっていたんですよ、貴方」
「そ、そうか……迷惑をかけた」
「構いませんよ。一時間は貴方に付き合う。そういう約束ですしね」
まあもうその一時間も過ぎましたが、とファストは肩を竦めて見せた。
「なのでもうおしまいでいいですか?」
「あ、……あぁ」
構わない、と告げれば約束通りに蜂蜜瓶を手渡す柳火。
それを満足げな表情で受け取るファストの様子からは先程の狂気は感じられない。
いや……先程の狂気、とは?
「ファスト」
「何でしょう?」
「その……何か変な呪文をアンタ、最後に使わなかったか?」
「? 何の話ですか?」
「……そう、か」
何でもない、とそう告げて柳火はその日の手合わせをお開きとした。
きっと幻か何かを見たのだろう、そう結論づけてこの件については忘れ去ることにしたのだ。
世の中には知らないほうが良いこともあるのだから。畳む
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